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  デンマーク農業理事会 2012年 代表挨拶

Keep calm and Carry on

新年おめでとうございます。

冒頭の言葉は、圧倒的な軍事力で欧州大陸を席巻しつつあったドイツ軍によって、英国への空爆と侵攻がすでに指呼の間に迫っていた1940年、ロンドン市内に張りだされた市民向けのポスターの標語であります。‘じたばたせず、それぞれが持ち場の任務や仕事を諄々とやってゆこう’くらいの意味でしょうか。

昨年3月の大震災では多くの人命が失われ、地域の産業基盤が破壊され、さらに津波によって引き起こされた原発施設への打撃は自然災害を越えて社会全体に対して深刻な脅威となりました。これら一連のダメージはあまりにも大きく深刻であり、日本全体がその衝撃、被害、悲しみや喪失感から立ち直ることは容易なことではありません。しかし経済や景気について申すなら、今次の予期せぬ災害によってもたらされる負の影響以前に、いずれにしても日本が相当長期間にわたって、巷間頻繁に言われる‘更なる持続的成長’に導かれてゆかれるような軌道上には無かったというのが実状でありました。



デンマーク農業理事会
日本事務所 駐日代表
小野澤 鉄彦

新興国、途上国のように’伸びしろ‘の大きい国々であればともかく、(日本や北欧のように)一人当たりGDPが5万ドルにもなるような国々においては、持続的な成長という命題に、そうそう整合性のある答えが有るとも思われません。人口動態の変化(高齢化や人口そのものの減少)、個々人に対する社会(福祉)運営のためのコスト負荷の増大(税負担の増大)、社会の成熟化故の新たな需要(市場)開発の限局など、われわれ業界が直面しつつある困難は、多く構造的なものにその因を発しているのであって、‘値下げ競争’などで局面が打開されるものではありません。もう久しく進んできた価格(低下)競争が市場構造全体にとって大きな瑕疵となりつつあることは明らかでありました。そうした我が国の全般的な市場状況、社会状況の中で出来した震災であったからこそ、これがもたらす更なる負の影響を想像してみるだにまさに慄然とさせられるものがあったのです。

しかし、そうした動揺をのりこえ、我々のおかれた状況をあらためて鑑みれば、災害による重大な被害すら、それを元に復してゆかねばならないという、非常に大きな希望と期待につながるものでもあり、生産供給を強く促される道筋にも繋がってくる面もあるのでしょう。まして食は人々の生活の根幹をなします。復興にあたって、人はまず豊かで安定した食を通じて様々な良きことを希求し力強く前に進んでいけるものです。日本全体が停滞に沈み勝ちとなり、さらに今次の震災によって大きな打撃を受けた今であるからこそ、かえってそこに市場を促進する契機が見出せるのかもしれません。災いを転じて福となす。われわれ食の業界も被災復興から求められる需要だけでなく、日本の社会全体を更に前に進めてゆくために求められる期待に今こそ応えてゆかなければならないのだと思います。

KEEP CALM and CARRY ON ― 新しい年、現下の困難を凌いでゆこうとするとき、悲しみや動揺を越えて、それぞれの持ち場で仕事の原点に戻り、ひたすら諄々とより良い製品づくりを継続し市場に安定して提供してゆくことこそが今一層大切なのだと思えてなりません。

デンマーク農業理事会は、今年も様々な事業活動を通じて、業界各分野の方々とより密接な連絡連携を促進して少しでも皆様のお役に立つよう努めてまいります。一層のご鞭撻をお願い申し上げます。